トマトちゃん
ねえ、秋がくるよ
今年のトマトちゃんも甘かったみたいだね
あの子がそう話していたよ
もうずいぶん背が伸びたね
うちのトマトは苺みたいに甘いんだって、あの子が友達に自慢していたよね
それを聞いた時ね、トマトちゃんはすごく嬉しそうに風にサワサワしてたね、見てた?
毎年ね、うちに来るトマトちゃんは一生懸命なんだよ
あの子に競うように、ぐんぐん背を伸ばすんだ
昔は本当に小さかったんだよ
いつもランドセルのまま、こっちに来てツンツンしてってくれたんだけどね
今はずいぶん忙しそうで、毎日疲れた顔をしてるよね
でもたまにトマトちゃんの収穫に来た時は、子供らしい顔になってるんだ
もう今年のトマトちゃんもいなくなっちゃったし、あの子は来年までこっちには来ないと思う?
いつも秋の始まりは、トマトちゃんが急に消えて、目の前の景色が寒々としてしまってね
あんまり好きじゃないって言ったら、秋が悲しむかな
うん、楽しい話をしよう、来年のトマトちゃんはどんな子だろう?
あの子はこっちに来てくれるかな?
来年もきっと、うちのトマトちゃんが世界で一番だと思うよ
君は色んな家を旅してきたんだろう?どう思う?
そういえばうちに来る前に君がいた家の、お向かいの居酒屋の話
あれの続きを聞かせてよ